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小さなえほんとしょかん―ゆめのたね―

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ぼのすけのボツエッセイ 1 

幸せの絵本 大人も子どももハッピーにしてくれる絵本100選

絵本がくれた幸せ

 できたてホヤホヤの『幸せの絵本』が届いた。居ても立ってもいられず、夕食作りの手を休め、ダンボールの包みを開けてみる。
 明るいオレンジ色の表紙が、目に飛び込んできた。シロクマとペンギンが、仲良く絵本を眺めている。
 私は大急ぎでページをめくり、「あった、あった!」にんまりしながら、『ぼのさん』の声を読んでみる。『ぼの』というのは、絵本を紹介するウェブサイト『絵本ナビ』での、私のハンドルネームである。
 この本は、大人も子どももハッピーにしてくれる絵本の、ガイドブックなのだ。選りすぐりの100冊を、カラーの見開き画像と、ママやパパたちの生の声で紹介している。
 私が『絵本ナビ』を見つけたのは、2年前の秋だった。大好きな絵本について、誰かと語り合いたくて、慣れない指使いで検索した。
 自分の感想がすぐ載るのがうれしくて、次女の昼寝中や家事の合間に、せっせと投稿した。
 暗記するくらい何度も読んだ本も、もう一度読み直した。子どもたちの反応や、我が家ならではのエピソードをつづりたかったから。投稿するために、寝る前の絵本タイムが始まったようなものだ。動機は不純かもしれないが、3人の子どもたちは、目を輝かせて聞いてくれた。
 家にある本だけでは足りず、図書館にも通うようになった。当時1才だった次女の分まで、貸し出しカードを作ってもらい、一度に数十冊も借りてきた。
 いくら好きといっても、知らない絵本は山ほどある。『絵本ナビ』の評価ランキングを参考に、読んだことのないのを次々に借りてみた。次女も、小学生の長男や長女も、三人三様好みが違った。今まで表紙を見ただけで敬遠していた物でも、読んでみてびっくり!ということが何度もあった。
 びっくりといえば、こんなことがあった。
 母子で参加しているよさこいの練習にも、次女は時々絵本を持参した。それを見て、チームきってのホープ、高校生のY君が身を乗り出してきた。
 「わー、なつかしい!『もこ もこもこ』ですよね?しーんから始まって・・・・・・」
 きっと、何度も読んだお気に入りだったのだろう。すっかり内容を覚えていた。
 こんなこともあった。長男の担任のO先生が家庭訪問にみえた。玄関には、カレンダー代わりに『ぐりとぐらの1ねんかん」が飾ってある。目ざとく見つけた先生は、
 「わー、『ぐりとぐら』大好きだったんです!あのカステラがうまそうで・・・・・・」
 急にいたずらっ子の顔をのぞかせた。
 Y君にしてもO先生にしても、絵本とは無縁にみえたので、何だかおかしいやら、うれしいやら。我が子たちが大きくなっても、私の知らないどこかで、好きだった絵本のことを思い出してくれるだろうか。
 一方、絵本の話題で盛り上がる私と子どもたちを、忙しい夫は横目で見ていた。自分だけ取り残されたような、淋しさを感じていたのかもしれない。
 そんな時、『絵本ナビ』で活躍する3人のパパによるお話会があり、参加する機会に恵まれた。
 子どもたちは最前列に陣取り、ママとは違う読み方にひきつけられていた。そんな子らに混じって、じりじりと前へ進み、とうとう目の前に座り込んで聞いているパパがいた。そう、夫だった!子どもの反応に合わせ、アドリブをバンバン入れて、読むというよりは、絵本を使ってコミュニケーションするパパたち。当時、養護学校で教師をしていた夫には、新鮮だったらしい。
 それからは、我が家の絵本タイムにも、積極的に夫が参加するようになった。体全体を使って、すぐ脱線してしまうパパ流の読み方に、子どもたちは釘付けになった。
 そのうち「僕も読む」「私も読む」と、長男も長女も読み手に加わった。まだ字が読めない次女でさえ、上手にページをめくり、自作のお話を読んでくれるようになった。
 こうして、ワイワイにぎやかな絵本タイムは、我が家にとって、なくてはならない大切なひとときになった。
 絵本は、家族団らん以外にも、たくさんの幸せをくれた。40を目前にして、自分が本当は何をしたいのか?夢を見失い焦っていた私に。「失敗したっていい。自分の好きな道をぼちぼちいけばいいじゃないか!」勇気と希望を与えてくれた。
 子どもたちが、いつまでつきあってくれるかはわからない。でもこれからも、家族5人額をくっつけあって、絵本を囲む幸せを味わい続けたい。そしてもしできるなら、この幸せをみんなにも分けてあげたい。
 この秋、私の『絵本ナビ』への投稿は、1,000冊を超えた。
                            2004.10.22
*このエッセイは、とある公募に応募して、ボツになった(落選した)ものです。

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